今回は美容師さん向けのお話しになります、とはいっても一人前の美容師さんだったら知ってることがほとんどで、これから詳しく勉強していく方に向いた内容かもしれません。
一般の方は「へーそんなことが自分の髪で起こってるんだ。」くらいに見ていただければと思います。
美容業界内で軟化・還元と言えば、パーマ液やストレート液を毛髪につけたことで起こる作用のことを指します。

軟化とは
軟化とは文字通り薬液で髪がやわらかくなる状態をさします。薬液に含まれるアルカリ剤で毛髪をやわらくし一本一本が膨らんだ状態になります。
軟化は何のためにするかというと毛髪を膨らましキューティクルを開いて毛髪内部に還元剤を届けやすくする役割を果たしています。
髪の中にはいくつかの結合が存在しますが、軟化では特にイオン結合が切断されます。これにより、髪が柔軟になり、形を変えやすくなります。
健康でしっかりした毛髪はキュッと引き締まっていて、軟化させないと毛髪内部に薬剤が届いてくれないのです。
逆を言うとものすごくダメージが進んでいて毛髪内部に薬剤がすぐ届く場合や、生まれ持った特性でキューティクルが少ない髪質であれば軟化はあまり必要ない、もしくは全く必要なく還元剤のみでパーマやストレートの施術を行うことができます。
毛髪のpH(ペーハー)は弱酸性で4.5〜5.5で弱酸性です、アルカリ剤は9近くのpHの薬剤を使用することも多々あります。
軟化のデメリット
軟化は毛髪を膨潤させ還元剤を内部へと届けるとても重要な役割を持っていますが、髪にダメージを与えてしまうというデメリットもついて回ります。弱酸性から対極のアルカリ性に毛髪の状態を変化させるのですから当然と言えば当然ですね。
そしてこのアルカリ剤は毛髪内部に入っているのでシャンプーや水洗ではいくら流しても毛髪内部に若干の残留は否めません。
毛髪内部に残留したアルカリ剤は水分に触れるたびに活動を再開し、毛髪が残ったアルカリ剤分だけpHが変化します。他にはカラーの色素を分解してしまう効果もありますので、色落ちが早くなるなどの視覚的なデメリットもあります。
アルカリ剤はカラー剤にも入ってるので薬剤をする施術後は処理剤などでしっかりとアルカリ剤を除去してあげることが大切です。
美容業界における「軟化」とは、主にパーマやストレートパーマなどの施術において、髪の毛を柔らかくし、形を変えやすくするプロセスを指します。軟化は、髪の内部構造に影響を与えるため、施術の成功を左右する重要なステップです。
軟化の重要性
- 適切な軟化は、パーマやストレートパーマの仕上がりを大きく左右します。健康毛で軟化が不十分だと、薬剤の浸透が足りずにカールやストレートの準備が整いません。逆に軟化しすぎたり、そもそも軟化が必要ない髪にはダメージを与える原因をつくことになってしまいます。
- 軟化プロセスは髪に負担をかけますので、髪の状態に応じた薬剤選びや施術時間の管理が重要です。
軟化後のケア
- 軟化後は、髪のpHを整えるために中和剤を使って髪を元の状態に戻します。これにより、軟化によって開いたキューティクルを閉じ、髪の内部を保護します。
- 軟化によって失われた水分や栄養を補うために、処理剤やトリートメントを使用して髪をケアします。
アルカリ剤の種類
アルカリ剤にはいくつかの種類があり、それぞれに特性と効果があります。以下は代表的なアルカリ剤とその効果についての説明です。
アンモニア
- 特性: 揮発性が高く、刺激臭がありますが、毛髪への残留が少ないです。
- 効果: 反応が速く、髪を軟化させ膨潤させることで、薬剤の浸透を助けます。ただし、オーバータイム(長時間放置)になりにくいという利点があります。
モノエタノールアミン
- 特性: 不揮発性でニオイは少ないですが、毛髪への残留が多いです。
- 効果: 反応は遅めですが、長時間膨潤しオーバータイムしやすいという特性があります。手に対する刺激が少ないため、扱いやすい面もあります。
炭酸水素アンモニウム
- 特性: 弱アルカリ性のアルカリ剤です。
- 効果: 時間が経過すると炭酸とアンモニアに分解され、アルカリ性が強くなります。これにより、反応が強くなる特徴があります。
アルギニン
- 特性: 塩基性アミノ酸の一つで、毛髪との親和性が高いです。
- 効果: アルカリ剤としての作用は比較的穏やかで、反応も穏やかです。元々毛髪内部に存在する成分で髪に優しい選択肢として使用されます。
これらのアルカリ剤は、パーマやカラーリングの際に髪のpHを高め、髪を軟化、膨潤させて薬剤の浸透を促進するために使われます。それぞれのアルカリ剤の特性を理解し、目的に応じて最適なものを選ぶことが重要です。

還元とは
美容業界における「還元」とは、主にパーマや縮毛矯正の施術で使用されるプロセスで、髪の内部構造、特にシスチン結合を切断するために行われる化学的な処理を指します。このプロセスは、髪の形状を変えるためのステップとしてなくてはならないものです。
還元の詳細
- 還元は、髪の内部のシスチン結合(S-S結合)を切断することによって、新しい形状(カールやストレート)を作るための準備をします。
- 還元剤(例えば、チオグリコール酸やシステアミンなど)が髪に作用し、シスチン結合を切断します。これにより、髪が一時的に柔らかくなり、形状を変えることができるようになります。
- 還元のプロセスでは、主にチオグリコール酸、システアミン、サルファイトなどの還元剤が使用されます。それぞれの還元剤は、髪のダメージレベルや毛髪内部のどの部分の結合を切りたいかなど、施術の目的に応じて選ばれます。
還元の影響
- 還元が適切に行われ、酸化させることで髪は新しい形状に固定され、施術後もその形を保つことができます。
- 還元が不十分だと、形状がうまく変わらず、施術の効果が現れにくくなることがあります。
- 還元のプロセスは、髪にダメージを与えます。必要な分だけの還元と、施術後の髪の保湿や栄養補給を行うことで、ダメージを最小限に抑えることが重要です。
還元後のプロセス
- 還元によって切断されたシスチン結合を再結合させるために、酸化剤(2剤)が使用されます。これにより、新しい形状が固定されます。
還元剤の種類と効果を発揮する場所
チオグリコール酸アンモニウム
- 効果を発揮する場所: 主にS1(親水性)部分に効果的。時間が経ってくるとS2にも作用してきます。
- 特徴: もっとも一般的な還元剤であり、強い還元力を持っています。しっかりとしたカールやストレートを作るのに向いています。施術開始時ははアンモニア臭がしますが時間経過共に揮発し、きちんと処置すれば残臭は少なめです。またアルカリ領域でよく働き、pH8.4くらいで効果が強くph7.0あたりの中性域で活動がかなり不活性化します。
システイン
- 効果を発揮する場所: S1部分に効果的。
- 特徴: マイルドな還元力で、髪へのダメージが少ないです。柔らかい仕上がりが得られるため、ダメージヘアに適しています。システイン自体はパワーが弱めなのでアルカリ剤を強くする傾向にありますので、そちらでダメージ進行してしまう場合がありますのでシステインであってもアルカリ度やpHはよく知っておいた方が良いです。システイン=優しい、ですがシステインが使用されている薬液=優しいではないので注意が必要です。
システアミン
- 効果を発揮する場所: S2(疎水性)〜S1部分に効果的。
- 特徴: 柔らかな質感を作り出しますがパワーはそんなにつよくありません。弱酸性pH5.0〜アルカリ域まで活性範囲が広く使用しやすいです、残臭は残りやすいです。
チオグリセリン
- 効果を発揮する場所: S2部分に効果的。
- 特徴: アルカリから酸性に向かって行くにつれて低刺激で髪に優しい還元剤です。自然な仕上がりを目指すスタイルに向いています。残臭があります。
サルファイト
- 効果を発揮する場所: S1部分に効果的。
- 特徴: 比較的弱い還元力で、ダメージが少ないため、敏感な髪質に使用されることがあります。カラーの褪色も、残臭も少ないです。ただし、高アルカリでの使用があるのでそちらでのダメージに関しては十分に注意が必要です。
GMT(グリセリンモノチオグリコレート)
- 効果を発揮する場所: S1部分に効果的。
- 特徴: 弱酸性領域から中性領域(pH4.5〜7.5)で活性する還元剤。柔軟性が高く、ナチュラルなカールを作ることができます。ダメージやカラーの褪色も少なく、環境に優しい成分としても注目されています。仕上がりは若干ハリコシがあるタイプになっていてチオに似た仕上がり感です。
スピエラ
- 効果を発揮する場所: S2部分に効果的。
- 特徴: ダメージは少なくストレートやカールにしようされます。こちらもやしいタイプではありますが還元する部位の関係でダメージが強く出る場合もありますので注意が必要です。残臭に関してもありますのでできる限りしっかり流すこととドライイングのアドバイスをしましょう。
このようにサロンで使用されているアルカリ剤や還元剤はたくさん
の種類があります。
しかも還元剤とアルカリ剤の組み合わせでその効果やパワーのパターンは無数にあります。まずは自店の薬剤パワーやどのpH域で働くのかをしっかりと見極めれるようにする必要があります。

今回の記事はいかがだったでしょうか、昨今はインターネットが発達したおかげで、こういったマニアックな内容も理論だけであればしっかり勉強することができます。
過去の美容室では先輩に教えていただいたことをそのまま実践していて、その先輩もさらに先輩にと受け継がれてきたままで、途中で独自理論が混じったりして今思えば問題のある内容も非常に多かったです。
ストレートやパーマでもいまだに「軟化テストします」なんて言ってしまいますしね笑
ここ数年で理論などは勉強し直しましたが、まだ勘違いして覚えている内容がないかと自分自身を危惧しています。
若い世代は新しい知識をそのまま素直に学び、歴の長い美容師も現役でいる以上ちゃんと学び直したいものです。
この内容が美容師の皆さんのスタイルづくりの助けになれば幸いです。また次の記事でお会いしましょう。
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